じっくり煮込まれたチキンをスプーンでほぐし、一口食べると、ふわっとスパイスの香りが口いっぱいに広がった。ゆで卵と、タマネギの甘みが香るご飯との相性も抜群で、スプーンを持つ手が止まらない。骨付きチキンカレーのようなこの料理は、バングラデシュの伝統料理「ローストプラオ」だ。
ここは、JR東十条駅(東京都北区)近くのバングラデシュ料理店「プリンスフードコーナー」。バングラデシュの有名ホテルで働いていたシェフらが腕をふるい、本場の味が人気を呼んでいる。
店舗の9席はしばしば満席になり、通りにあふれた人たちがベンガル語を話しながら料理をほおばっている。バングラデシュ出身で、この店に毎週訪れるというポラシュ・ラハマンさん(30)は「ふるさとを思い出す」と満足げだ。
店主のジャラル・アリさん(32)はバングラデシュの首都ダッカ出身で、2021年にこの店を始めた。近くにモスクができたことがきっかけで、「礼拝後に、みんなが安心してハラルフードを食べられる場所を作ろうと思った」と話す。
連載「異国食堂 ガチグルメ in Japan」
「プリンスフードコーナー」のある東十条周辺には、国内最大のバングラデシュコミュニティーがあります。記事後半では、多くのバングラデシュ出身の人々がこの地域に暮らすようになった背景を紹介します。
モスクができ、周囲にバング…